K-HACCP認証 現場レポート①(株式会社龍名館様)老舗旅館の“職人気質”を継承しながらHACCPを構築・運用・維持管理する

最終更新: 2019年7月9日

 株式会社龍名館では、東京の八重洲で「ホテル龍名館東京」、神田駿河台で「ホテル龍名館お茶の水本店」、新橋で「ホテル1899東京」を運営しており、いずれのホテルも“和”と“洋”が心地よく調和した独特の雰囲気が、多くの観光客やビジネスパーソンの心を惹きつけています。

 同社では、1899年(明治32年)創業の旅館龍名館本店から始まる歴史や格式、伝統を守りながら、時代の流れやユーザーのニーズにも敏感かつ柔軟に対応しています。その一環として、ホテル龍名館東京では、創業100周年に当たる2009年(平成21年)に「都市型ホテルとしての機能」と「龍名館110年の歴史と伝統」の融合を図るべく、8階建ての「ホテル八重洲龍名館」を15階建ての「ホテル龍名館東京」に全面的に立て替えるとともに、館内デザインも一新して“和のコンセプトを取り入れた近代的なホテル”へと大胆かつ大規模なリニューアルを果たしました。ホテル龍名館お茶の水本店は、2014年に「旅館龍名館本店」を改装して開業しました。また、ホテル1899東京は、「お茶」をテーマに2018年にオープンしたホテルで、国内外から注目を集めています。

 そうした時代の潮流への対応は、ホテルのコンセプトや設計だけにとどまりません。昨今、消費者の関心が高まっている“食の安全・安心”にも積極的に対応しています。同社が運営するレストランは、2019年4月、株式会社協和医療器が提供する「K-HACCP」認証を取得しました。認証取得に取り組む前から、厨房の定期的な衛生検査・監査の実施、微酸性電解水生成装置やATPふき取り検査の導入など、自主衛生管理には積極的に取り組んできました。

 株式会社龍名館では、都内で3ヶ所のホテル(ホテル龍名館お茶の水本店、ホテル龍名館東京、ホテル1899東京)、4ヶ所のレストラン(レストラン1899お茶の水、花ごよみ東京、紺碧の海、デリ&バル1899東京)を運営しています。レストランにおけるK-HACCP認証取得の経緯や効果について、同社・レストラン事業部の和田麻由氏にうかがいました。





現場の“経験知”を文書化する――

飲食店HACCP特有の苦労を経験


――はじめにK-HACCPに取り組み始めた経緯についてうかがいます。

和田 2015年頃から本格的な衛生管理の強化に取り組み始めました。それ以前にも、各店舗では料理長が中心となって衛生管理の活動は行っていましたが、(当時は)衛生管理のための部署は設置しておらず、定期的な衛生監査や衛生講習なども行っていませんでした(保健所や民間組織が主催する食品衛生の講習や研修には参加していましたが)。現場では衛生管理に関するマニュアルやルールは特に作成しておらず、ベテラン社員や職人さんの“経験”や“感覚”に基づいて、それまでの慣習としての衛生管理を続けている状況でした。

2015年頃から社内・社外でHACCP制度化に関することが話題に上がったり、関係者から「HACCPにどのように取り組んでいますか?」と尋ねられることも増えてきました。そこで、私がレストラン事業部に異動したタイミングで、本格的なHACCP導入に着手しました。しかしながら、当時から“HACCP”という言葉は知っていたのですが、「HACCPは大規模な施設でなければ難しい」「レストランで取り組むには大きな壁がある」という印象もありました。そのように悩んでいたタイミングで、協和医療器からK-HACCPのご提案をいただきました。K-HACCPの説明をうかがう中で、「レストランでもHACCP構築は可能」と思えるようになりました。私自身、レストランで調理業務に携わってきた時に、何度か“ヒヤリハット事案”に遭遇した経験がありました。そうした経験も踏まえて、現場で実効性の高いHACCPを構築できれば、と考えました。


――K-HACCPでは、具体的にどのような活動から始めましたか?

和田 まずは「衛生管理のルール化(マニュアルの文書化)」と「社内での衛生監査の運用」から始めました。

 特に苦労したのは「マニュアルの文書化」です。これまで現場では、職人の経験や感覚を頼りにした衛生管理を行っていました。「『現場で実際に行っている作業』をマニュアル化・文書化する」ということは、すなわち「職人の感覚知を文書化する」ということです。しかしながら、実際にやってみると「感覚知を言葉で表現する」というのは非常に難しい作業です。レストラン事業部が現場でスタッフに作業の手順やポイントを詳細にヒアリングしながら、一つひとつの作業を文書に落とし込んでいきました。苦労はしましたが、その成果として、全店舗で統一の作業手順や管理基準を明確化することもできました。

 社内の衛生監査については月1回実施しています。また、ATPふき取り検査※、蛍光塗料を用いた手洗いチェック、毎年4回の検便検査なども行っています。ATPふき取り検査では、手指、包丁、非加熱食材に使うダスター、冷蔵庫の取っ手、蛇口、シンクなどを検査項目としています。包丁の検査では「刃」「付け根」「取っ手」に分けて検査します。最初のうちは、付け根や取っ手で高い数値が出ることもありましたが、「なぜ高い数値になったのか?」「どのように洗浄すれば低い値になるのか?」などを根気よく、丁寧に説明することで、現場と一緒に改善を進めています。

※ATPふき取り検査

ATP(アデノシン3リン酸)を指標としたふき取り検査法。検査結果が10秒程度で数値化されることから、食品取扱い施設では製造・加工環境や調理環境の清浄度(汚染度)のチェックの用途で普及している。最近では病院などにおける環境由来の感染症対策など、さまざまな用途で活用されるようになっている。






「お茶」をテーマにした、和と洋が融合したレストラン

(写真は東京・駿河台のレストラン1899お茶の水)





株式会社龍名館 レストラン事業部 和田麻由氏


(月刊フードケミカル  立石 亘)


K-HACCP認証 現場レポート①へ

K-HACCP認証 現場レポート②へ

K-HACCP認証 現場レポート③へ

ft_logo.png

〒104-0031  東京都中央区京橋1-6-12 NS京橋ビル5F TEL.03-6228-7244

Copyright(c) Kyowa Medical Systems Co.,LTD. All Rights Reserved.